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楽は勿論、芸術というものは人と人とのコミュニケーションでございますから、そういった創造物を、そういったメッセージを受ける人に渡していくという仕事をしていかなければならない。その橋渡し役としてマネージメントが必要なのです。そこに書いてありますように、発信者から仲介者を通して受信者という形に矢印がついていますが、そういう形で渡していく仕事を我々はやってきていたわけです。
ですが、今非常に盛んになってきましたアートマネージメントという考え方は、実はこの表でいきますと一番右側、つまり聴衆、受信者の側から見た考え方だと私は思います。これはどういうことかというと、聴衆がどういうアートを望んでいるのかということから、つまり逆に出発するわけですよね。ですから、アートのインサイドで考えているアートマネージメントというのは、左から右へ行く矢印だったんですが、今考えておられる、盛んに言われているアートマネージメントというのは、むしろこの矢印が逆なんです。右から左へ、つまり聴衆の方から仲介を通してアーチストの方に返っていく矢印、そういうことを考えておられるというふうに私は思います。
このことは非常に大事なことでございまして、アートというのはコミュニケーションだというふうにさっきも申し上げましたが、つまりアーチストがある創造物をつくって、あるメッセージを聴衆の方に渡していく。そうすると、それに対して聴衆が反応してくる、それが返ってくる。その返ってきたものによって、またアーチストが刺激をされて、さらに高い創造物がそこに生まれてくる。コミュニケーションを通してメッセージが聴衆の方ヘ伝わって、それがまた反応として返ってくる。そういった循環作用が、舞台芸術の場合歴史的に行なわれてきた起きてきたわけで、これは非常に重要なことであると思います。
したがいまして、さっきちょっと我々が戸惑うと言ったのですが、本当は戸惑ってはいけないので、インサイドのものも、今言ったアウトサイドのものも、1つの線の上で語られなければいけないものになのだと思います。アートマネージメントという言葉が盛んに5年ぐらい前に言われたころには、これは何なんだろうなということを私は随分考えて、よくわからない時代がありましたが、このごろはそういうふうな考え方で、解決をつけております。
舞台でよく言いますけれども、お客さんが非常によかったから物すごくうまい演奏ができちゃったとか、お客さんに弾かされたとかということがあるわけです。これは今言ったように、逆に返ってきたものがアーチストに対して、よりよく弾かせるような作用を持っているということになるわけなので、聴衆も創造に参加しているということになります。

 

 

 

 

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